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梅雨とレフリュー



梅雨入り宣言が出されて以来どんよりした天気が続いてたけど,今日は朝から強めの雨がずっと降り続いてる.期末テストの2日目獣坂学園の生徒は午前中までのテストを終えて足早に家へと帰って行く.
「テストかぁ…リュークス君みたいにちゃんと準備してたらこんなに慌てないんだけどねぇ.」
学生が傘を指して駅から出ていくのをのんびりと眺めながら駅前のドーナツ屋で教員採用試験の問題集を卓上に置いて今日3杯目になる追加コーヒーを待ちながら僕はそうつぶやく.


はじめての人に説明するのは難しいんだけど,獣坂学園の高校生リス獣人のリュークス君の体の中に僕の前世の相棒だったハスキー犬獣人のリュークスの意識が同居してる.ロバ獣人の僕,レフとしてはどっちも好きすぎてで困ってしまうんだけど.真面目な高校生の彼をリュークス君,腐れ縁の彼はリュークスって呼んでる.リュークスとは肉体関係があるんだけど,それってリュークス君とも関係を持ってしまうってことで,若い高校生を40過ぎのおじさんが好きにしてるって世間では言われそうなんだけど,意識の中心がリュークス君の時の肉体関係はあんまりない.こっちとしてはしてみたいなぁ…と思ってるんだけどいまはもっぱらリュークスとの逢瀬を楽しんでいる.とそんな感じ.


「この歳になって試験なんて思っても見なかったけど,ふぅ…問題は専門分野だなぁ,一度覚えたはずなんだけど,使ってなかったし…うん.」
そうつぶやきながら顔をあげ強い雨が降る駅前を観ながらコーヒーを啜っていると顔見知りのリス獣人の姿が目にとまる.
「んんっ?どうして?リュークス君?彼の降車駅はここじゃないはず…って,あ!」
ついつい大声を出して,慌てて荷物をまとめてカバンに詰めて店を出る.どうしてって?それは彼がこの雨の中傘もささずに駅前の道を走り出したから.


「なんで,もう…全く.ああっ,これじゃ全然追いつけない.」
若い子といっても驢馬獣人とリス獣人の体格差なら十分に追いつけると思ったけど,傘さしてるぶんスピード出せない.走りながら傘を畳み右手で握りながら全力疾走,目に雨が入って見にくいけどそんなこと言ってられない.ひとつ先の交差点の信号機が赤に変わる.全力で走っていたリュークス君が赤いランプを恨めしそうに見上げている.自分の目の前の信号は青,道路を渡って一気に距離を詰めて横に並んで声をかける.


「リュークス君,どうしたのこんなところを傘もささずに!もう,びしょ濡れじゃないか…風邪引いいちゃうよ.」
驚いたように声の方向に顔を向けて僕の顔を真っ直ぐ見つめる仔リス.
『レ,レフさん……….ああ,良かった,電話しても出なかったから心配になって.』
「ん,電話?」
慌ててカバンのスマートフォンを取り出す.着信履歴欄がリュークス君の名前で埋まっている.
「うわ…ホントだごめんね.何度もかけてくれてたのか…ごめん,ずっとサイレントモードにしてたんだ.あ,とにかくこれ以上濡れちゃまずいねぇ.」
手に持って傘を開いてリュークス君にもたせて,カバンから取り出したタオルでリュークス君の体を拭く.
『あ,ありがとです…レフさん.クシュッ!…んぁ,あの,明日のテストの2次方程式の絶対値のついた問題がわからなくって.レフさんならわかると思ったんだけどお休みだって聞いて…それで…それで…うわっ!』
頼られたことが嬉しくて思わず腕を回して仔リスを抱きしめる.
「それで,電話くれたんだね,でも傘忘れるなんてリュークス君らしくないね.」
体を近づけて背中を拭きながら話を続ける.


『あ…あの,レフさん?ちょっと近いです…人見てますし…』
傘が傾いて僕が濡れているのを気にしてくれたのかちょっと態勢を直して傘をはさんで向かい合った形になる.
『傘は持ってなかった友達に貸しちゃいました.レフさんのお家だったら駅から近いし走っていけばそんなに濡れないかなぁって.』
その顔でまっすぐ僕の顔見ながら言われるとそれ以上怒れないし,言え無いんだよなぁ.ポンと彼の肩に手をやって歩くように促しながら.
「まったく君も,もうひとりのキミも無茶するの好きだよねぇ.ここに心配する人がいるんだってこと忘れてない?さ,行こ.僕んちでお風呂に入ってさっぱりしてから数学教えるってことでいい?あ,なんなら一緒に入ってもいいよ.お風呂.」
冗談めかしたセリフを吐きながら相合い傘で家へとあるき出す.リュークス君はちょっと下を向いて黙ったまま歩いている.


ちょっと間が空いて下を向いていた仔リスの視線がこちらに向く.
『良い…ですよ.レフさんとだったら……….あ,でもいつも僕じゃない方のボクの裸は観てるんだからあんまり新鮮じゃ無いかもしれないですけど…』
って答えてちょっとはにかむ.
「そ…そうなんだけどね,いや,あの…なんていうか…ね…」
当然やんわりと断られると思っていた冗談を素で,それもOKの返事が帰ってくるなんて予想だにしなくて返答に困ってしまう.
『レフさん困らせると楽しいからって,もうひとりの僕が言ってたんです.でも,一緒に入りたいなって言うのは本当の気持ちですから.』
困ってるロバに助け舟を出してくる仔リス.
「もう,大人をからかうもんじゃありません!家についてお風呂に入ったらお仕置きね.あ,しっぽ雨で濡れちゃうねぇ.」
慌てて尻尾でリスの大きな尻尾を絡め取って傘の中に入れる.


『あ…ありがとうございます.なんだか手をつないでるみたいで,ちょっと恥ずかしいかも….』
ドギマギするリュークス君の気持ちがしっぽから伝わってくる.さっきびっくりさせられたからちょっとお返し.
「さ,風邪引いちゃうといけないから急ごっか.リュークス用の白熊印のボディシャンプーとかちゃんと用意してあるからね,アイツが買っとけって言ってたんだけどね.」
相合い傘の二人が足早に住宅街のアパートに向かって歩いていく.もうすぐ梅雨が開ける頃のお話.

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