♂獣人達の盛り場ログ - レフ♂ロバ獣人0
レフ♂ロバ獣人
 (ざわざわと騒がしい酒場に入ってくるロバ獣人.空いている席があるにもかかわらず広い店内をきょろきょろしながら歩き回っている.しばらく雑踏の中を彷徨っていたが,意を決して奥にいる店員の犬獣人のところに駆け寄っていって声をかけた.)こんばんは,ねぇ今日はライカさんとイリヤさん来てないの?ギルドの案内所にいないからてっきりこっちで夕飯食べてるか,飲んでるんじゃないかと思って来たんだけど…(もう一度2人がいないか酒場を見回して確認し,ふたたび犬獣人の店員に視線を向ける)

レフ♂ロバ獣人
 (「んーここ最近見て無いねぇ…何か仕事頼まれてるとかじゃないですかねぇ.あ,はーい!今行きますよー!」とそっけない返事.酒の追加の注文があったらしく足早にレフの前から去っていく.)あ,ありがと…そっか…ほかを探してみるかねぇ.(仕方なしげに,帰ろうとすると横から「レフ,そんなに慌てて…何か急用かい?」と声をかけられる,振り向けば同じように懇意にしている駆け出しの若い獅子獣人がクエストを終了したらしく波々とジョッキに注がれた赤ワインを口に運んでいる.)

レフ♂ロバ獣人
 あぁ…良いところに!ダンデさん,2人の事行き先知ってるの?(向かいのテーブルの席に座って顔を突き出して,問いただすような目でライオンを見つめるレフ.「なんだよ,なんでそんなに2人の行き先が気になるんだよ.」勢いに気おされつつ逆に聞き返すダンデ.状況を話してないことに気がつき,すまなそうな顔をして事情を話し出す.)

レフ♂ロバ獣人
 実は…常備していた毒消し草の在庫がつきそうなんだ.思ったよりも需要が高かったみたいで,それで底をつく前に材料とりに行きたくって,お2人に護衛をお願いできたらなぁ…って,それだけなんだけどね.(話を聞くと,若いライオンは一口ワインをあおった後話を続けた.「あいつらは2人でクエストに行ってる筈だぜ.なんだか穢れの呪いを受けた竜を救出するとか何とか言ってたなぁ…ま,面倒臭そうな仕事らしいけどな.2人にとってはいわくつきの相手らしいぜ.あの白熊のお兄さん攻撃系呪文だけかと思ったら,状態回復系の高等魔法も使えるらしいぜ,あれ詠唱が難しいのになぁ.」と,ひとしきりしゃべりつつつまみを頬張り,杯を空けていく.)

レフ♂ロバ獣人
 あぁそうか…2人とも取り込み中なのか…じゃ仕方ないなぁ.ありがとダンデさん.また,うちの商品買いに来てくださいね,サービスしますから.(ひとつ決心をして大きく頷き,小走りに酒場を出るレフ.)

レフ♂ロバ獣人
 (街なかから少し離れた森のそばの自宅に戻って,旅支度を始めるレフ)仕方がない…たまには自分の力だけで何とかしないといけないってことか…えっと,回復用の高級な薬草はたんまり持って,修理に預かったイリヤさんの魔法補助具の氷の杖もちょっと拝借,性能確認試験って言うことで….あ,あと食料とお酒.よし,出来た!夜が明けたら出発…ということにしよう.(一人旅かぁ…この商売始めた頃以来かなぁ…過去に思いをめぐらせれば,ふともう一人頼りになるはずの男の顔が否応にも頭に浮かんでくる.)

レフ♂ロバ獣人
 あぁ…もう…どこでどうしているんだか…手紙一つよこさないで.まったく,もう一月以上音信不通って.はぁぁっ…リュークス…こんな時にいてくれたらなぁ.ま,アイツのことだから何処かでうまいことやってるんだどうけどね.(仕事の相棒のハスキー犬のリュークスとは2年くらい前にこのギルドで知り合った.始めは調子の良いやつだなぁって思うくらいだったけど,いつの間にかなくてはならない相手になってきてる.向こうは僕が旅人からもらう情報が目的なのかもしれないけど…僕はリュークスの事が…あ,やめよう.これ以上考えてるとちょっと切なくなる.とにかく仕事でふらりと何処かへ出掛けてはお金を稼いで帰ってくる.それが僕の想い人.)

レフ♂ロバ獣人
 あ…もう寝なきゃ明日早いのに…(寝床の中で幾度も寝返りをうちながらろくでなしの事を考えてると,突然ドアを強くノックする音が聞こえてくる.ビクッと長い耳がその音に反応して.そして,起き上がり玄関の扉へと向かう.)こんな時間に…まったく…はい,今開けますからそんなに壊れるほどドア叩かなくても大丈夫ですよ.(入り口まで行って鍵を外して扉を開ける.勢い良く押されたドアの向こうにハスキー種の犬獣人が息を切らせて立っていた.そして,僕を観るなり満面の笑みを浮かべて…『わりぃ…忙しくて連絡もできなくて.腹減ってるんだ,なんか無いかなぁ…レフ.』突然の事に一つ息を吸い込んでから,言葉をつなぐ.)

レフ♂ロバ獣人
 リュークス!何だよこんな夜遅くに…腹減ったじゃないよ!まったく,“ただいま”くらい言ったらどうだい?(キッとハスキー犬を睨めば,少し間をおいて『わるかったなごめん,ただいま…レフ.』トーンを落とした声を発して下をむくリュークス.)あ,ご,ごめん怒ってるんじゃないんだ,ただちょっとびっくりして…ごめん…あ,あの…あのさ…,僕も言ってなかったね…ごめん,おかえりリュークス.さ,入って,明日から薬草採取の旅に出ようと思ってたから十分なご馳走はできないけど,朝ごはんに取って置いたものがあるからちょっと待ってて.(シュンとした彼に慌てつつテーブルに座らせ,奥の台所から胡桃入りのパンと干しりんご,暖炉にかけてあったかぼちゃのスープを持ってきてテーブルに置く)

レフ♂ロバ獣人
 (『いいのか,これ食べて?』言葉とは裏腹にすごい勢いで息つく暇もなく出されたものを平らげていくリュークス.その様子をテーブルの向かいに座って見つめるレフ.ほぼ食べ終わってスープを飲み干した彼の視線がやっとこっちを向いた.)あ,仕事どうだったの?上手く行ったの?(いろいろ話したいことがあるはずなのに,肝心な時にうまい言葉が見つからなくてなんだか間抜けな事を聞いてしまう.『うん,上々かな.レフの作った薬は結構いい値段で売れるし,色々と使いみちがあるから助かってるぜ.』そう言って大きな旅用のカバンからお金の入った革袋をテーブルの上に乗せる.『そうだ,薬の代金払わないとって,そのために戻ってきたんだった.それに,在庫が尽きたから今ある分貰って行きたいかなぁって.わりぃ,これで足りるかな.』(金貨を6枚取り出してレフの前に置いて.)

レフ♂ロバ獣人
 そ,そんなにもらえないよ,それにそれって全財産でしょ?薬作るのに使った薬剤は金貨1枚で十分だし,今の在庫全部の値段だって金貨1枚分位だから,残りはリュークスが使ってよ.色々と旅先で必要だろうし.(差し出されたテーブルの上の金貨を2枚残し,4枚を空の革袋の中に入れて犬獣人の鼻先に差し出す.『わ,悪いな…そうしてもらえると助かるんだ…』ちょっとホッとした顔で微笑むリュークス.)お金なんて別にどうでもいいんだけどね…リュークスがちゃんと帰って来てくれれば…(大事そうに革袋をカバンに戻すリュークスを観ながらボソッと呟くレフ.『ん,何?何か言った?』声に反応して顔だけこちらに向けるリュークス.)

レフ♂ロバ獣人
 い,いやぁ…なんでもない…なんでもないってば.あ,そうそう,リュークス帰ってきたら開けようと思っていたワインあるんだ.飲みたいって言ってた赤の“ルナール・ド・ルークス”をライカさんとイリヤさんが冒険のお土産にってくれたんだよ.色々話したいこともあるだろうし,今日は朝まで飲もうよリュークス.ね,ちょっと待ってて.倉庫に取りに言ってくるから.(少し頬を赤らめながら慌てて席を立つレフ.『わかってるんだけどな,お前の気持ち…』走り去るロバを見送りつつこちらも小声でつぶやいて,再び袋から今度は小箱を取り出して.)

レフ♂ロバ獣人
 おまたせリューク…ス?(蔦で編んだかごに入ったワインとグラスを持って戻って来たロバの視界から待ち焦がれていた想い人の姿は消えていた.その代わりにテーブルの上に紙片と小箱が置いてある.慌ててその紙を取ればそこには走り書きの文字が残されていた.『ごめんレフ,どうしても夜明けと同時に出港する船に乗らないとならない.今度の仕事は1ヶ月位で終わる予定だ.手紙は…出せたら出す.本当にすまない.追伸:土産と言うか…これ使ってくれ.旅の無事祈ってる.リュークス』)

レフ♂ロバ獣人
 って…まったく,相変わらず忙しい奴だねぇ,ほんと,どうしてこうひとところに落ち着いてくれないんだか…(リュークスの座っていた椅子に向かってため息混じりに一つ愚痴をこぼし,小箱を開ける.中にはプラチナに魔力の詰まったガーネットがはめ込まれた指輪が一つ入っていた.)これ…『まもりの指輪』じゃないか…それもレベル高いやつ,金貨30枚は間違いなくする…それであんなにお金無かったんだ….ちゃんと帰ってきてねリュークス,その時ちゃんとありがとうって言うから.(扉へ少し目を向けて,小箱から指輪を取り出し左手の中指に嵌める.周囲の空気が優しくレフを包み込む.)あ,なんだかアイツに守られてる気がする.ありがと,リュークス.

レフ♂ロバ獣人
 (夜の帳が深く降り,漆黒の闇が包み込むなかでオスロバは再びベッドに潜り込む.リュークスのくれた指輪をした手を胸に当てて,大きく一つ息をして.)君が守ってくれるから,きっと一人の冒険もうまくいくさ.早く一人前になって,君と一緒に店を構えられたらなぁ…(いつしか寝息だけが聞こえる室内.夜はゆっくりと更けていった.)